土地土地にも神さまがいる、家を建てるには地鎮祭をしなくてはならない、そうしたことを信じる信じないにせよ、私たち人間の所有物ではないのは確かだろう。
心のこもった地鎮祭を
――(地下水を必要以上に汲み上げたりして、人間が奢って、傍若無人すぎる。どうしてもという時は土地にお伺いすることだ。その土地を借りるんだから、という話から)山の仕事をする人は必ずするね。
でも最近愚かな者もいるからね。そうすると谷に呼ばれるんだ。山の者がルール違反を犯すと、(山のルールを)知っている者として認識されているから、なんでこれやらないんだって。感覚、方向感覚をおかしくされるから、自分で落ちて、山から戻れない。
――お伺いを立てるってどういうことですか?
そこが色々いわれのある土地だとしよう、そこにあたかも神様がいるようにして、お伺いを立てるんだ。
――地鎮祭とか?
そう。心のこもった地鎮祭が大事だね。やらないよりはやった方がいいけど。
やらないと変なものが入りやすいよ。建築に関わる棟梁さんたちは信心深いよね。それって1、2回は怖い目に遭っているんだ。土地神がいないと禍物(わざわいもの)が入ってくる。
――井戸を潰すときも昔からいろいろ怖いっていうよね。
お酒、水と塩とお米、そして息抜き(管を刺して空気を通す)をしないと。井戸で一家離散とか、一族全滅も多い。ふたをして息抜きしないと中が腐って腐り物が入ってくる。(私たちには)そういう仕事もくるけど、無理だと断ることもある。
古い家を壊すときに、お狐さんとか祀っているところを壊そうとすると重機が動かなくなるとか。でもそこのお狐さんは、いいお狐さんで、ここ壊すのでこちらに移動してくださいと挨拶したら重機は動いたんだ。
棟梁に「ちゃんと御霊移ししたの? そうしないとお山に帰れないんだ。」って言って、お狐さんにちゃんとこれでいいか聞いて動いてもらった。自分たちで奉れなければちゃんとお返ししないとね。
木を切るのも、ちゃんと木に聞いて、できるだけ残すようにするとかね。
(木を)移すにしても話をしてほしい。実がなるものは強いから特に気をつけて。葉っぱがギザギザしているものは守りだし。
古い家を壊すのに、どうも気配がするというので呼ばれたら、そこにおばあちゃんがいたんだ。別に壊すのはOKだったんだけど心残りがあって、聞いたらテレビ台の中にハンディカメラがあって映像があった。息子さんにあげたかったんだ。その中に運動会の映像があって、それを息子さんに渡したらおばあちゃんは納得したんだ。
若いころのおばあちゃんの御霊も上にいたんだ。子育てしている頃の年代で一生懸命子供を育てていたから執着していて、ちょっと大変そうだったんでお地蔵さんにまかせたんだ。動物も埋まっていたから土を変えた。そしたら、その土地は売れたんだ。
男の人でも信じる人が増えたけど、若い人は知らないから、変なところに建てたがる。地鎮祭を知らない。デザイナーズハウスみたいなので、とんでもないところに建てたがったりする。崖の上とかね。かっこいいからと。
――そう、建築家とか、アピールしたくてそういうところに変わった家を建てたりする。
そういうところはたいてい地鎮祭はやっていないから土地神の怒りの中にいたりする。土地がらみ、家の建て替えは結構いろいろある。
(続く)
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